父の相続で相続税がかからなければ、母の相続でも相続税がかからないと思われていることも多いです。
ただ、そうとも限りません。その理由をまとめてみました。
父の相続と母の相続
夫婦なら、相続はそれほど遠くない時期に2回あります。
先に父の相続があるとすると、父の相続が1次相続、母の相続は2次相続といわれます。
夫婦の相続が遠くないといっても、最近は長生きしやすい人生ですし夫婦の歳の差もあったりと、相続が近いとも限りませんが。
では、父のときに相続税がかからなければ、母の相続でも相続税がかからない、と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。
父の相続と母の相続で前提が変わっていることもあるからです。
母で相続税がかかる理由
父の相続で相続税がかからなかったのに、母の相続で相続税がかかる理由には、こんな理由が考えられます。
父の相続は10年以上前
相続税の大きなルール変更が2015年1月1日にありました。
そのときの大きな変更の1つが基礎控除額が減ったことです。
変更前(2015年より前)の相続では、基礎控除額は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」、そして、変更後は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変わっています。
父と母、子ども1人の家族で、父の相続が2014年、母の相続が2023年にあったとすると、
父の相続での基礎控除額は7,000万円(=5,000万円+1,000万円×2人)
母の相続での基礎控除額は3,600万円(=3,000万円+600万円×1人)
となり、さらに母の相続では相続人が1人減っているので、結果として変更前と変更後では基礎控除額は倍近く変わります。
すると、父の相続では相続税がかからなかったけど、母の相続では相続税がかかるということがありえます。
母の相続で「小規模宅等の特例」が利用できない
自宅をはじめとする土地については、要件をクリアすれば限度面積まで評価額が20%になる特例があります。
「小規模宅地等の特例」といわれるものです。
この「小規模宅地等の特例」について、父の相続では利用できるように検討されていても、その先の母の相続での利用は意外と検討されていないことも。
結果として、母の相続では「小規模宅地等の特例」の利用ができず、土地の評価額が大きく増えてしまうということがありえます。相続税もかかってしまうわけです。
それでなくても父の相続があった当時からすると、土地の価値が上がって評価額が増えていることもあるわけです。
母の相続では父の財産が上乗せ
父の相続があると、母も相続人ですから父の財産の一部を相続します。
すると、母の相続では、「母のもともとの財産+父から引き継いだ財産」に相続税がかかります。
母が財産をある程度持っていた場合は、父の相続では相続税がかからなくても、母の相続で相続税がかかることもありえます。
特に注意したいのが、父の相続で配偶者の税額軽減を使うケース。財産の多くを母が相続することで、母の相続で相続税が大きく増えることがあります。
1次相続にあって2次相続にない配偶者の税額軽減 「払えるか?」は先まで考えておく | GO for IT 〜 税理士 植村 豪 OFFICIAL BLOG
事前のシミュレーションが必要
ということで、父の相続で相続税がかからなかったからといって、母の相続で「相続税はかからないでしょう?」と思い込んでいると、あとで相続税の負担が多くて払えないと困ることにもなりかねません。
そうならないようにするためには、
・父の相続の段階で母の相続(2次相続)もシミュレーションする
・母の相続でも「小規模宅地等の特例」が利用できないかを検討する
・父の相続から母の相続までに生前贈与や財産の組み換えなど相続対策をする
といったことを早いうちから検討しておくことが必要です。
あとで困ることがないように、父の相続から事前に税理士などに相談しておくのも手です。
相続には事前の対策が欠かせませんので。
【編集後記】
昨日はオフ。朝に長男(8)とお友だちと3人でサッカーの練習。ジダヌのマルセイユルーレット(もどき)を伝授したら、2人ともひたすら練習していました。あとは2対1でのボールの取り合いとミニゲームがなかなかキツく。夜は早めにダウンしました。
【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
PRUV