生前贈与は相続対策の1つとして効果があるものです。とはいえ、現状がわからないけどひとまず贈与しておくというのはおすすめしません。
その理由をまとめてみました。
生前贈与が相続対策になるから…
相続対策の1つとしてメディアに取り上げられることも多い生前贈与。
生前贈与というのは、じぶんの財産を妻や子どもや孫などにあげること。「あげた」「もらった」というお互いの意志表示があってできる契約です。
で、将来の相続税を減らすために、相続になる前から財産を子どもや孫にわたして、相続税のかかる財産を減らすというのが生前贈与を利用した相続対策です。
2024年からは、暦年贈与課税だけでなく相続時精算課税でも110万円以下なら贈与税はかかりません。生前贈与をする気持ちがあるなら、利用を考えてもいいでしょうね。
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ただ、相続税を減らしたいがためにひとまず贈与するというのはおすすめしません。
「ひとまず贈与」には、リスクもあるからです。
「ひとまず贈与」をやめておいたほうがいい理由
「ひとまず贈与」をおすすめしないのには、次のような理由があります。
気づいたらお金がない
前述したように贈与するということは「あげる」こと。じぶんの財産をかわいい子どもや孫にわたすわけです。
あげたお金をどう使うか、決めるのは本人。
そのお金を生活や旅行などに使う、貯金するも受け取った子どもや孫の自由です。
「節税になるから」と子どもや孫に毎年の贈与を繰り返した結果、気づけばじぶんの手元のお金がなくなっていたということもありえます。
確かに生前贈与が相続対策の1つになることは事実です。
ただ、その前に少し考えたいのは将来のこと。相続の前にまだじぶんの余生があります。
これから医療費や介護のお金がかかる可能性もあります。急に海外旅行に行きたくなるかもしれません。
でも、そのときにお金がないわけです。贈与を何年もした後ですから。
子どもや孫にお金を返してと言えればいいのでしょうが、一度あげたモノ。
返してほしいとはなかなか言えないのではないでしょうか。
そういったことがないように。将来かかるお金を見立てることなく、「ひとまず贈与」はやめた方がいいという話です。
本当に相続税かかる?
同じ金額の財産にかかる税金。
相続税の税率に比べると贈与税の税率は高いです。
それでも、贈与税の生前贈与が相続対策になるのは、相続税は相続時点でのすべての財産を積み上げて計算するのに対し、贈与税は1つの財産だけで税金を計算するというしくみの違いもあります。
仮に500万円のお金を贈与するともらった人が払う贈与税は48.5万円。実質の税率は10%です。
相続税の実質の税率が20%だとすると、贈与税を少し払ったほうが相続と贈与をあわせてもお金が残ります。贈与した財産のうちには相続税の計算に含めなくていい財産もありますから。
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「相続税>贈与税」であれば、です。
相続になってフタを開けてみたら実は相続税がかからない。
相続税がかかったとしても、払う相続税がそれほど多くないということも。
節税のために生前贈与をしたものの、実は「相続税<贈与税」だったということもあるでしょうし、前述したように長生きするためのお金がないといったこともありえます。
生前贈与のご利用は計画的に
生前贈与は相続対策の1つの方法ではあるのですが、バランス感も必要です。
人生、何があるかもわからず、特に年齢を重ねれば長生きするためのお金も必要になります。
それを踏まえて。
生前贈与をするなら、生活費を確保した上での余裕資金の範囲内で、というのがおすすめです。
やっぱり返してと言わなくてもいいように。
もし、相続対策で子どもや孫などにお金を贈与するとしても、相続税を払うためのお金のことも伝えておくと、相続税を払うとしてもすでに使ってしまって払えない…という悩みはなくせるでしょう。
生前贈与をするなら、まずは現状の財産がどれだけあるのか、相続税がかかるかどうか、などをざっくりとつかんでおき、その上で生前贈与をするかどうかを決めるのがいいかと。
そうすれば、少なくとも「とにかく贈与」を防ぐことができます。
わからなければ、税理士にも相談してみるといいでしょうね。
【編集後記】
昨日はオフ。午前中は自宅で過ごし、午後は隣の刈谷市で開催されたイベントに長男(8)と参加。アットホームな感じで楽しめました。夜は長男(8)とカレーをつくって食べてからUNOや映画などを。最近、またUNOにハマりだしました。
【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
とあるイベント