中小企業の社長の相続では、会社と個人の両面で考えることが必要です。
社長に借りた土地の賃料の支払いを止めると、いろいろ困ることがあるという話です。
よくあるケース 社長に地代を払う会社
中小企業の場合、
- 社長の土地の上に会社が建物をたてている
- 社長の建物を会社が借りている
というのはよくある話です。
たとえば、社長の土地の上に会社の建物があるとすると、会社は、社長個人に地代を払うことになります。
(ややこしくなるので、ここでは賃貸にあたっての必要書類はすべて出しているものとします。)
社長がじぶんで経営しているだけに、会社のお金をじぶんで工面して、じぶんに払うというおかしな感じにもなるのですが、会社と個人は別扱いなので、きっちりわける必要があります。
ただ、じぶんでやっているだけに、それをおろそかにしがちです。
資金繰りが苦しくなると…
会社をやっていると、資金繰りが悪くなることはあります。
そのとき、真っ先に手を打つとしたらどこか?
取引先に迷惑をかけるわけにもいかず、役員報酬を下げたり、社長に払う地代を止めようと考えるでしょう。
ところが、役員報酬は期の途中での変更は、基本的にはできず、「そうだ、地代をなしにしよう」という考えに至ります。
ただ、このことがあとあとで大きなデメリットを招くのです。
タダ貸しなら、社長個人も不動産所得を申告しなくてもよくなります。
そうして月日が流れると賃貸借していたことが記憶から消えていきます。
また、会社が地代を経費にしたいからと賃貸借を続けるつつ、お金のやり取りをしなくなるケースもあります。
「地代家賃 100 / 預金 100」を「地代家賃 100 / 役員借入金 100」に変えるというように。
これを何年も繰り返すことで、役員借入金がどんどん増えていきます。
ここで、感のいい方は気づくかもしれません。
個人の「貸付金」という相続財産が増えているということに…。
仮に4,000万円の貸付金があるとすると、お金に変えることのむずかしい財産のために、相続税を前払いする結果になります。
会社の資金繰りが悪ければ、いつになったらお金を回収できるのか、回収できるアテはあるのか。
相続になってから、この事実を目の当たりにするのは避けたいものです。
タダ貸しでは小規模宅地等の特例が使えない
相続税の特例のひとつの小規模宅地等の特例。
- 会社(不動産業以外)に貸しているの被相続人の土地
- 会社に貸している被相続人の建物の敷地になっている土地
を、親族役員が相続した場合、400㎡まで80%の評価減ができます。(他にも要件はあります。)
小規模宅地等の特例のうち、特定同族会社事業用宅地等という特例です。
相続税への影響も大きいこの特例、有料で賃貸しているのが大前提です。(固定資産税の程度ではN.G)
で、ちょっと思い出して欲しいのですが、先程、会社の資金繰りがタイヘンだから、タダ貸しにするという案がありました。
仮にタダ貸しにしてしまうと、この小規模宅地等の特例は使えなくなります。
土地について400㎡まで80%の評価減ができなくなるわけですから、とても大きなデメリットです。
これは相続後に賃貸借に戻したところで、どうしようもない話です。
会社の資金繰りだけを見ていると、個人の相続でタイヘンなことになるといういい例です。
ということで、会社を経営している場合には、会社と個人、両面をみつつ、生前から検討しておくことが必要になります。
貸付金と小規模宅地等の特例どちらも相続での影響は大きいので。
【編集後記】
昨日はお客様と打合せ。ブログのこの編集後記から行動をチェックいただいているので、毎度話がはずみます。
【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
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