いちばん確実な相続税対策であるコツコツ贈与。
とはいえ、「いくら贈与したらいいのか?」これをExcelでざっくり計算してみました。
いくら贈与したらいいの?
相続税は亡くなった方の財産にかかる税金です。
過去は100人いたら4人といわれていた相続税ですが、平成27年の改正を境に現状は100人いたら8人の人に相続税がかかるといわれています。
つまり、より相続税に目を向けるべき人が増えたということになります。
通常、相続対策と言われるのは次のようなものです。
- もめない(分割協議)
- 払えるか(納税資金)
- 相続税を減らす(節税)
「もめない?」、「払えるか?」を優先するべきですが、かといって、「払えるか」という納税資金のことがある以上、やはり相続税額のことも考慮しておきたいところです。
その相続税をいかにして減らすか?
一番効果があるのは、やはりコツコツ毎年贈与をしていくことです。
贈与税には、高いというイメージがあるのですが、毎年110万円以下の贈与なら、贈与税はかかりません。
ただ、状況によっては、ちょっと早いスピードで財産を移転したいケースも。
ただ、その場合でも財産の移転スピードはゆっくりです。
例えば、5年間贈与するとした場合、
- 毎年100万円の贈与なら100万円×5年=500万円
- 毎年300万円の贈与なら500万円×5年=2,500万円
と、移転できる財産額がかなり違ってきます。
その代わり、300万円で贈与した場合、財産をもらった人は(高速料金として)1年ごとに贈与税19万円を払う必要があります。
コツコツ贈与がいいというポイントは、贈与した財産のうち、相続税の計算に積み上げになるのが、相続開始前3年以内の財産だけということです。
(この場合、払う相続税から贈与税のうち一定額を引けます。)
つまり、相続開始前3年より前に贈与した財産については、相続税の計算に含まれず、贈与税を払うだけということになります。
そもそも相続や遺言で財産をもらっていない人への贈与なら3年以内でも相続税の計算に含まれません。
このことから相続税との関係で、あえて贈与税を払っておいたほうが、相続と贈与トータルでは有利になるというケースがあるわけです。
『いくら贈与したらいいの?』
そんな話から「いくら贈与したらいいの?」という疑問がわいてきます。
ざっくり言うと、「相続税の実質税率≧贈与税の実質税率」となるような金額を贈与すればいいことになります。
相続税の実質税率 = 相続税額/財産
贈与税の実質税率 = 贈与税額/贈与金額
そうなると、結局は相続財産がいくらあるかがわからないと、「いくら贈与したらいいのか?」その最適な金額はわかりません。
そこで、まずは相続税の概算を計算し、「相続税の実質税率≧贈与税の実質税率」となるポイント、「贈与分岐点」を探すということになります。
Excelで贈与金額の分岐点を探してみた
分岐点をとなる贈与金額については、Excelを使ってざっくり計算することができます。
相続税額の概算を計算
C3セルで相続税の課税価格を2億円と入力すると、右側の速算表をもとに相続税を計算します。
それをもとに、セルF23で相続税の実質税率を計算しています。
相続税の実質税率=相続税額/相続税の課税価格
相続税や贈与税のExcelでの計算、もう少し詳しくという方については、こちらの記事が参考になるかと。
→法人税、所得税、消費税、相続税、贈与税。税金の計算に使うExcel関数。ROUNDDOWN・INT・MIN・MAX・VLOOKUP
贈与金額ごとに贈与税と実質税率を計算
下の方では、贈与金額ごとに、速算表をもとに贈与税額を計算。さらに贈与税の実質税率を計算します。
贈与税の実質税率=贈与税額/贈与金額
贈与分岐点については、贈与税の実質税率が相続税の実質税率を超えないところの税率をVLOOKUPで探し出して、贈与金額を抽出するという流れです。
直系か?それ以外か?
贈与税の税率は、2段階です。
直系尊属(祖父母や父母)から贈与した年の1月1日時点で20歳以上の人(子や孫)に贈与した場合にと、それ以外とで使う速算表が変わります。
「直系」か「その他」をリストで選択できるようにしています。
リストは、データ→データの入力規則で入力値の種類をリストにして、元の値に直系とその他を入力します。
このとき、「,」で区切るのがポイントです。
速算表から贈与税額を計算
速算表から贈与税を計算します。
基礎控除後の金額というのは、後述の税金計算の数式がさらに複雑になるので、いったん基礎控除後の金額を計算して、ワンクッションおいています。
MAX(0,C30-$C$30)で0と「C30-$C$30」のどちらか大きい方を、という算式です。「$」はF4で固定するということです。
税額の計算は少し複雑ですが、VLOOKUP関数を使うことで計算できます。
セルE30には、少々複雑ですがこういった式を入れています。
1 2 3 4 5 |
=IF($C$26="直系",D30*VLOOKUP(D30,$H$25:$J$32,2,TRUE)- VLOOKUP(D30,$H$25:$J$32,3,TRUE),D30*VLOOKUP(D30,$H$36:$J$43,2,TRUE)- VLOOKUP(D30,$H$36:$J$43,3,TRUE)) |
意味は、「もし、直系からの贈与なら「直系」の速算表で計算して、それ以外なら「その他」の速算表で計算してほしい」としています。
VLOOKUP関数の最後、TRUEとしているのがポイントです。
Falseだと絶対一致、TRUEだと近似一致で検索値以下となるデータを抽出します。
詳しくはこちらの記事で。
VLOOKUPを使って贈与金額『いくら贈与すればいいか?』を抽出
「いくら贈与すればいいのか?」
今回知りたかった贈与金額をVLOOKUP関数を使って、セルF43に抽出しています。
VLOOKUP関数はここまで見てもらったとおり便利なのですが、ただ、検索値がいちばん左じゃないと機能しないという特性があります。
このままでは抽出できません。
そこで、贈与金額の左側、B列に税率を複写して、いちばん左を税率にして検索値にできるようにしました。(うすく表示してあるところです。)
その上で、式は次のようにしています。
1 |
=+VLOOKUP(F23,B30:C41,2,TRUE) |
相続税の実質税率を検索値として、それを赤枠で囲った範囲、つまり贈与税の実質税率の中から探して、相続税の実質税率以下の税率になるような贈与金額を抽出、それをセルF43で表示させています。
結果、300万円となります。
ポイントは税率を一番左に表示して、VLOOKUPを使えるようにすることでした。
別のパターンでもやってみます。
相続税の実質税率は11.52%、これに最も近い贈与税の実質負担率を探してみると、実質負担率が11.3%で贈与金額600万円。
600万円贈与して、贈与税を払っても相続税とトータル考えると有利ということです。
「いくら贈与すればいいか?」ざっくり計算ならこれで十分でしょう。
Excelは仕事を通じてアウトプットするには最適です。一度やってみていただければ。
【編集後記】
昨日はお客様訪問。月次の確認と今月やるべき手続きの確認などを。戻ってからブログでした。
【昨日の1日1新】
※「1日1新」→詳細はコチラ
とある依頼